『田園の詩』NO.28 「 校 歌 」 (1995.5.2)



 PTAの役員をしている関係上、小学校や中学校の卒業式と入学式に出席して、
子供たちが元気に歌う校歌を久しぶりに聞きました。校歌は、その学校に在籍
した者たちだけの共有する歌なので、特別に懐かしさを覚えるものです。

 田舎の風景を詩にする時、必ずといってよいほど≪山と川≫が出てくるようで
す。唱歌の『ふるさと』には、『兎追いしかの山/小鮒釣りしかの川』とあります。

 当然、田舎の学校のわが校歌は山や川のオンパレードです。小学校の校歌
には『@ながめははるか山並み晴れて/青空遠く由布が峯を/仰ぐ瞳も清らか
に… A真清水ひかる山蔵川に/映えてあかるい雲ヶ岳…』とあります。

 中学校は『@見よ大空に雲ゆくところ/男の子の意気は高かれと/われらに示
す華ヶ岳…A聞け淙々(そうそう)と岸かむところ/女子の心は清かれと/日夜
たゆまずゆく黄金川…』です。

 ちなみに、これは作家の山本有三氏の作詞になるもので、曲も素晴らしく、
天下一品の校歌だと、私は誇りにしています。


      
     2002.12.28、朝7:50に自宅の近くから撮影した由布岳(右)と鶴見岳(左)
     の山容です。山浦小学校の体育館の屋根が中央左よりに見えます。まだ朝日を
     受けていません。ちなみに、温泉で有名な湯布院は由布岳の向こう側、別府は
     鶴見岳の左側にあたります


 ところで、私がこの2曲を口ずさんでいると、女房に、「ここは田舎だから、
山と川ばっかしやなあ」と笑われました。

 女房の里は、大都会の京都市伏見区です。「それなら、お前のは、どんな歌だっ
た?」と尋ねたら、思い出しつつ歌い始めました。『@清き流れの桂川/よどむ暇
なし水の音… A愛宕のおろしなにあらん/おのが心の雄々しくば…』。やっぱり、
≪山と川≫が歌い込まれていたので、二人して大笑いです。

 息子たち二人は、現在、中学生と小学生です。行事の度に歌う校歌は、彼ら
の意識の奥深くインプットされるでしょう。私は20年の都会生活を経て、いま、
田舎暮らしをしています。都会にいた時、故郷の山を思い出しながら、『男の子
の意気は高かれ』と、いつも自分自身に言い聞かせてきました。

 息子たちにも、将来どこに住もうとも、≪山と川≫の校歌を思い出してもらいた
いものです。                      (住職・筆工)

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